Web Syllabus(講義概要)
トップへ戻る 前のページへ戻る
環境倫理・法規
英文名Environmental Ethics and Laws
科目概要生物環境科学科3年前期 [水曜日2時限(週1コマ)]、2群科目、必修、講義、2単位(30時間)
担当者(◎は科目責任者,※は実務経験のある教員) ◎森 淳※森 初夫
講義室841講義室
備考科目ナンバリング:VE201-BS22

授業の目的

農地の生産基盤を整備する農業農村整備事業は,農業生産性を大いに向上させた一方で水域を中心とする生態系における生物多様性の劣化を招いた。これは人間が豊かな生活を目指す行動と自然の保全が二律背反する最もわかりやすく身近な例である。生物環境科学科は多くの農業農村整備事業関係者を輩出したが,時代とともに己の仕事が環境に与える影響を考慮しながら仕事をする必要が一層強まっている。
上述のように農業農村整備技術者は特に環境倫理を意識しがら,事業の法制度と環境との関係を明確に理解し,自らが行う重要性を社会に対して説明できる能力を持つ必要がある。つまり農村地域における豊かな自然にインパクトを与えざるを得ない宿命を持つ技術者は,技術者倫理を理解することはもとより,環境との関係を十分理解する必要がある。施設を作るだけの,いわゆる「トンカチ屋」であってはならないのである。
こうした環境と人間の関係については,農業農村整備事業関連に進む意志を持つ者のみならず,近代的な技術による利益を享受しながら現代に生きる者すべてが,技術と環境の関係を熟慮・理解しなければならない。すなわち,そもそも環境倫理学や技術者倫理は,現代に生きる者が習得しなければならない学問なのである。
本講では,農業農村整備事業を支える法制度について特に環境との関連を深く理解するとともに,技術者としての適切なモラルを持ち,広い視野で社会のために考えて行動できるための知識を習得すること。

教育内容

人類の生存を脅かしかねない環境問題は,一見自分たちの日常生活とは離れた遠い世界の出来事のように感じられる。それは,様々な環境問題が身近な空間で起きることが稀であるからにすぎない。しかしその問題の所在を知り,社会がどのようにその在り方を修正すべきかを考えることは現代人の必須の教養であり,次世代に対する義務である。特に農村の空間デザイナーである農業農村整備技術者の専門家としての役割は,一般の人には分かりにくく,仮に不正(法律上の不正のみならず,環境保全上の不正を含む)をしてもなかなか露わにならない。だからこそ専門家として自らの倫理行動を可能とする倫理意識を身につけ,自ら律することが重要なのである。そのため,広い視野で社会のために考え,自らを律する技術者として必要な倫理的判断力と倫理的意思力を養うため,技術者の倫理に関する基礎的な知識を学ぶ。
また,環境と農業農村整備事業との関係を理解するため,農業農村整備事業が実施される背景、目的を、食料・農業・農村基本法など農政上の位置づけ、環境保全の取り組みなどについてわかりやすく解説する。また農業農村整備事業が関連する法律(農地法、農村地域法など)との関連も説明する。

教育方法

講義形式で行う。各回講義は,担当教員が作成した教材と板書を併用する。
課題を課した場合は、次回の授業で、課題の中の特徴的な見解や誤解についてコメントすることによりフィードバックする。
また青森県職員から現場に即した内容でご講義いただく。

卒業・学位授与の方針と当該科目の関連

〇DP4:環境資源の維持と修復に寄与する能力
◎DP5:環境保全に関わる社会の多様な要請に応えられる問題解決能力

授業内容(シラバス)

項目内容担当者
1講義ガイダンス
環境倫理学と倫理学
講義日程、講義内容、受講にあたっての留意事項等の説明
倫理とは何か、モラルと倫理、法と倫理について,環境倫理学と倫理学
森 淳
2科学と技術自然と人間,科学技術の発展,科学技術と人間の暮らし,科学技術と環境問題,科学リテラシー森 淳
3人間中心主義と人間非中心主義ディープ・エコロジー,動物倫理学,エコ中心主義,人間中心主義森 淳
4生態系と倫理学環境難民,最適者の生き残り,共有地の悲劇,外部経済・外部不経済,環境プラグマティズム
森 淳
5食料・農業・農村関連法と環境配慮食料・農業・農村基本法、現基本法の仕組みと4つの理念、食料・農業・農村基本計画,農村地域における開発と環境倫理森 淳
6土地改良法関連法規(1)国営・県営事業の仕組み,土地改良区とは森 淳
7土地改良法関連法規(2)農地中間管理事業、多面的機能支払交付金森 淳
8土地改良法関連法規(3)農地法,農業地域振興法,農業経営基盤強化促進法など土地改良事業に関係する法規森 淳
9農業農村整備事業の実務(1)農業農村整備事業の調査計画、農村の総合整備事業、環境配慮の実施森 初夫
10農業農村整備事業の実務(2)かんがい排水事業、ほ場整備事業森 初夫
11農業農村整備事業の実務(3)環境公共、小テスト森 初夫
12技術者と倫理技術者倫理の歴史,職務上の義務,技術者の倫理教育森 淳
13環境に関する法的責任およびモラル責任ならびに説明責任不法行為法,製造物責任法(PL 法),使用者の責任,コンプライアンス,公衆の知る権利と説明責任,インフォームドコンセント,内部告発の基準,知的財産の保護
森 淳
14農業農村整備技術者のアイデンティティ専門職の倫理,研究者の倫理規範,農業農村整備技術者の在り方森 淳
No. 1
項目
講義ガイダンス
環境倫理学と倫理学
内容
講義日程、講義内容、受講にあたっての留意事項等の説明
倫理とは何か、モラルと倫理、法と倫理について,環境倫理学と倫理学
担当者
森 淳
No. 2
項目
科学と技術
内容
自然と人間,科学技術の発展,科学技術と人間の暮らし,科学技術と環境問題,科学リテラシー
担当者
森 淳
No. 3
項目
人間中心主義と人間非中心主義
内容
ディープ・エコロジー,動物倫理学,エコ中心主義,人間中心主義
担当者
森 淳
No. 4
項目
生態系と倫理学
内容
環境難民,最適者の生き残り,共有地の悲劇,外部経済・外部不経済,環境プラグマティズム
担当者
森 淳
No. 5
項目
食料・農業・農村関連法と環境配慮
内容
食料・農業・農村基本法、現基本法の仕組みと4つの理念、食料・農業・農村基本計画,農村地域における開発と環境倫理
担当者
森 淳
No. 6
項目
土地改良法関連法規(1)
内容
国営・県営事業の仕組み,土地改良区とは
担当者
森 淳
No. 7
項目
土地改良法関連法規(2)
内容
農地中間管理事業、多面的機能支払交付金
担当者
森 淳
No. 8
項目
土地改良法関連法規(3)
内容
農地法,農業地域振興法,農業経営基盤強化促進法など土地改良事業に関係する法規
担当者
森 淳
No. 9
項目
農業農村整備事業の実務(1)
内容
農業農村整備事業の調査計画、農村の総合整備事業、環境配慮の実施
担当者
森 初夫
No. 10
項目
農業農村整備事業の実務(2)
内容
かんがい排水事業、ほ場整備事業
担当者
森 初夫
No. 11
項目
農業農村整備事業の実務(3)
内容
環境公共、小テスト
担当者
森 初夫
No. 12
項目
技術者と倫理
内容
技術者倫理の歴史,職務上の義務,技術者の倫理教育
担当者
森 淳
No. 13
項目
環境に関する法的責任およびモラル責任ならびに説明責任
内容
不法行為法,製造物責任法(PL 法),使用者の責任,コンプライアンス,公衆の知る権利と説明責任,インフォームドコンセント,内部告発の基準,知的財産の保護
担当者
森 淳
No. 14
項目
農業農村整備技術者のアイデンティティ
内容
専門職の倫理,研究者の倫理規範,農業農村整備技術者の在り方
担当者
森 淳

到達目標

環境倫理の理念と歴史的背景、及び具体的取組との関連を理解するとともに,技術者倫理について基本的知識を習得し,技術者として自分の行動がもたらす結果や影響を推測できる。また,悪い影響が予測できるされる場合,どう行動すべきか判断を下せる。
さらに,
①農業農村整備事業の事業内容と役割を説明できる
②農業農村整備事業と生物環境科学との関連性及び農業と環境問題との関連性を理解し説明できる。

評価方法

成績評価は、定期試験を行い100点満点に換算する。欠席者に関しては試験細則第5条を適用するほか、正当な理由がない場合は前述の換算点数から欠席1回当たり5点を差し引くので注意されたい。到達目標に達していない場合は再試験を1回行う。

準備学習(予習・復習等)

【授業時間外に必要な学習の時間:60時間】
予習:常日頃より環境に関する情報を収集しておくこと。関連する法律について事前に関連書籍や法律を主管する省庁のホームページから情報を得ておくこと。
   googleアラートに環境に関する用語を登録しメール配信するようにセットしておくと毎日勉強になる。
   https://support.google.com/websearch/answer/4815696?hl=ja
復習:授業中のノートや配布された資料を整理しておくこと。

その他注意事等

農業農村工学系公務員試験やコンサルタント入社試験等の基本となるので、この方面に進む希望がある者は特に十分学習をすること。
オフィスアワー(月曜日から金曜日16:30~18:00)を活用すること。不在であることが多いので事前にメール等で連絡して頂きたい。
原則として20分以上遅刻した場合は出席と認めない。
実務経験の授業への活用方法:農林水産省における農業農村整備事業の企画立案、実施及び農研機構における研究の経験を踏まえ,より現場に密着した授業を行う。

教材

種別書名著者・編者発行所
教科書(なし)
参考書環境と倫理加藤尚武有斐閣アルマ
参考書環境倫理学入門髙橋公次勁草書房
参考書はじめて学ぶ生命・環境倫理徳永哲也ナカニシヤ出版
参考書環境と科学技術者の倫理( 公益社団法人)日本技術士協会環境部会訳編丸善出版
教科書
署名
著者・編者
発行所
参考書
署名
環境と倫理
著者・編者
加藤尚武
発行所
有斐閣アルマ
参考書
署名
環境倫理学入門
著者・編者
髙橋公次
発行所
勁草書房
参考書
署名
はじめて学ぶ生命・環境倫理
著者・編者
徳永哲也
発行所
ナカニシヤ出版
参考書
署名
環境と科学技術者の倫理
著者・編者
( 公益社団法人)日本技術士協会環境部会訳編
発行所
丸善出版