英文名 | Ethics Education | |
---|---|---|
科目概要 | 動物資源科学科3年後期 [(週1コマ)]、教職課程科目、必修、講義、2単位(30時間) | |
担当者 | (◎は科目責任者,※は実務経験のある教員) ◎松浦 勉 | |
講義室 |
科目 | 教育の基礎的理解に関する科目等(教育の基礎的理解に関する科目) |
---|---|
各科目に含めることが必要な事項 |
|
この講義は、以下のような道徳教育に関する専門的力量の基礎を、学生に獲得させることを目的としている。一つは、学校教育における道徳教育を通して、子どもたち一人ひとりのが、自分なりのものの見方・考え方ないし原理・原則に基づいて、ことの是非・善悪を判断し、その主体的な判断に従って自主的に行動できる、すなわち「自ら動く人間」(吉岡忍)として自分を作り上げることを励まし、支援する意思と能力である。もう一つは、これと並行して、子どもたちが多様な人間関係を切り結び、共同して現代的な諸課題の解決にとりくむ新たな社会形成の担い手に成長するように、促し、支援する力量である。
こうした専門的な力量の基礎の上に、学校教育全体のなかでの道徳教育の指導に加えて、新「学習指導要領」の下でスタートした「特別の教科 道徳」の授業づくりができることが必須となる。
講義内容は、以下の①~④を中心的な柱とする。①近現代社会の道徳と道徳教育に関する歴史的・原理的な理解をのうえに立って、②日本の近代社会と学校教育の中で道徳教育が占めた位置と役割を検討する。こうした基礎的な理解をふまえて、③「戦後75年」余の、道徳と道徳教育をめぐって対峙する代表的な理論と実践を検討する。④2017年3月に改訂された中学校「学習指導要領」との関連で、子どもたちの成長と発達、解放、すなわち自主的で道徳的な価値判断・選択・創造の主体としての人間形成に寄与する道徳教育の「授業」の在り方と方法原理、「学習指導案」などを、教育課程全体とのかかわりで構想・追究する。
講義を基本とし、これにテーマによっては、グループ活動による協同学習をとりいれ、対話と発表を含む学生参加型の学びと学びあいを組織する。とくに新「学習指導要領」の告示により、「道徳の時間」から「特別の教科 道徳」へと道徳教育の教育課程上の位置付けと性格が変わり、「考え、議論する道徳」教育への質的転換が求められるようになった。ポジティヴに評価すれば、みんなで一緒に考え、話し合う道徳教育の成立である。
そのため、これに対応して、受講学生にも、文字どおりの主体的で対話を軸とする、決して浅薄ではない学びあいを体験してもらう。これは、そのまま実践的な道徳教育の授業作りに活かすことができよう。
回 | 項目 | 内容 | 担当者 |
---|---|---|---|
1 | ①オリエンテーション ②道徳とはなにか? ③道徳と道徳教育をめぐる原理的諸問題 | ①講義内容の説明=講義のねらいや評価全般について、ガイダンスをおこなう。学習グループを編成する。 ②道徳とは何かを、道徳的な価値の歴史的な変化に加えて、法律や宗教との関連で、相違点も含めて考える。 ③私たちの身近なところで影響力をもち続けている具体的な道徳目をとりあげて、道徳と道徳教育をめぐって、現代どのような問題点や課題があるかを考える。 | 松浦 勉 |
2 | ①道徳教育の現代的課題1— 新「学習指導要領」の告示と「特別の教科 道徳」をめぐって— | ①道徳と道徳教育をめぐる原理的諸問題の補足、②「道徳の時間」から「特別な教科 道徳」への質的転換とは何か。 ③「特別な教科 道徳」への転換によって、何が、どのようの変わるのか。 ④なぜ、「特別な教科 道徳」が成立したのか。 | 松浦 勉 |
3 | 道徳教育の近代史ー戦前・戦中の日本を中心にー | ①大日本帝国憲法の公布と「教育二関スル勅語」の関係を理解する。②「教育二関スル勅語」の理念が道徳教育に与えた影響の大きさと特徴を理解する。③それが、教科書の国定化と国定教科書「修身」として現れた問題について考える。 ④学習者としての子どもたちの人間形成に与えた圧倒的な影響について考える。 | 松浦 勉 |
4 | 道徳教育の現代史ー戦後日本を中心にー | ① 第3回の④を補足する。 ②道徳教育の視点から日本国憲法=教育基本法制の成立とその意味を考える。 ③初期「社会科」の成立から「特設道徳」=「道徳の時間」への転回とその意味を考える。③「道徳の時間」とは何であったのか、を考える。 | 松浦 勉 |
5 | 文部省「期待される人間像」(1966年)の道徳と道徳教育 | ①「期待される人間像」の成立過程とその意味を考える。 ②「期待される人間像」の説く道徳とは何かを理解する。 ③「期待される人間像」が道徳教育(「道徳の時間」)に与えた影響について考える。 | 松浦 勉 |
6 | 道徳教育の現代的課題2 —現代社会における地球的規模の諸問題(環境・生命・医療倫理など)に、道徳教育はどのように向き合うのかー | ①〈地球的市民〉として、現代社会における共通の倫理的問題(環境・生命・医療倫理など)について考える。 ②これらの諸課題に対して、道徳教育は、どうかかわり、どのような役割を果たすのか、を考え、議論し、認識を深める。 | 松浦 勉 |
7 | 子どもたちの現状・実態とそれが提起する道徳教育の課題 | ①多くの困難をかかえている子どもたちの実態(教育・医療・福祉・生活など)を把握する。 ②国連・子どもの権利委員会が日本政府に繰り返し是正「勧告」する日本の子どもの実態を認識する。 あわせて、子どもたちの不安その他の困難を理解する。 ③政府・文部(科学)省他の国家機関が、これにどのように 取り組んでいるのか、理解する。 | 松浦 勉 |
8 | 新「学習指導要領」と道徳教育(「道徳の時間」の教科化) | ①「学習指導要領」とは何か。 ②「特別の教科 道徳」の目標と内容を理解する。 ③ ②の目標・内容と方法の関係(たとえば、「考え、議論する授業」との関係)や第7回で検討した子どもたちの実態との関係などについて考える。 | 松浦 勉 |
9 | 道徳教育に関する実践記録と実践分析から学ぶ1——授業実践の事例―― | ①道徳教育に関する実践の記録や実践分析の成果をとおして、道徳教育の具体的なイメージをつかむ。 ②優れた教育実践の特徴(目的・教材・方法など)と実践の背景となっている子どもの実態や地域社会などの条件を把握する。 | 松浦 勉 |
10 | 道徳教育に関する実践記録と実践分析の成果から学ぶ2—教科外活動としての道徳教育実践の事例- | 道徳教育に関する実践記録と実践分析の成果から学ぶ2—教科外活動としての道徳教育実践の事例- | 松浦 勉 |
11 | ①中学校における道徳教育の全体構想と指導計画②「特別な教科 道徳」の評価の考え方と方法 | ①道徳教育の全体計画の作成、②「特別の教科 道徳」の指導計画、③文部科学省とその関連機関の評価の考え方、④道徳教育における評価の実際と「指導要録」、⑤ 3段階と5段階の「自己評価欄」を設けている検定教科書(2種)の問題について考える。 | 松浦 勉 |
12 | ①道徳教育の全体計画の作成、②「特別の教科 道徳」の指導計画、③文部科学省とその関連機関の評価の考え方、④道徳教育における評価の実際と「指導要録」、⑤ 3段階と5段階の「自己評価欄」を設けている検定教科書(2種)の問題について考える。 | ①「学習指導案」とその必要性について、②教材の種類と多様な学習指導(とくに主人公への「自我関与」が中心となる「読み物教材」とその学習指導について)、③教材の構造分析と活用の視点、③学習指導案の作成方法について、考える。 ④指定された教材を使用しての、学習指導案の作成 | 松浦 勉 |
13 | 道徳の「学習指導案」の作成2—「特別の教科 道徳」の学習指導案を作成して見よう- | ①指定された教材を使用して「学習指導案」を完成させる。②個別に作成した指導案を出し合い、グループ内で検討しあう。 ③個別に作成した指導案のプレゼンテーション、質疑応答。 ④共同で作成した指導案に基づいて、グループの代表が 「模擬授業」を実施するために、担当者をきめる。 | 松浦 勉 |
14 | ①「模擬授業」に挑戦してみよう。 ②学習(講義)のまとめ1 | ①各グループによる模擬授業の展開→質疑応答→検証と総括(グループの構成と所要時間は別途決める) ③学習(講義)のまとめ (テスト対応) | 松浦 勉 |
①法律や宗教との対比で、近現代社会の道徳(社会道徳・市民道徳)の基本的なあり方をとらえたうえで、今日のグローバル時代の内外の人権にかかわる諸問題との関連で、学校教育における道徳教育の積極的な意義と必要について、それぞれ説明することができる。[※知識・判断」②道徳教育の理念と実践の歴史的な展開と近代日本の学校教育における道徳教育の基本的な性格と特徴について、説明することができる。[※知識・理解」③学校教育全体を通して行われる道徳教育と、「特別な教科 道徳」の授業の指導法と指導計画を知識として理解するとともに、多様な属性をもつ子どもたちがかかえる課題や困難とのかかわりで、それを構想することができる。[※意欲・関心・技能」 ④とくに、「特別な教科 道徳」の授業では、「検定教科書」を使用することになるため、子どもたちの現状とそれを規定している歴史的・社会的条件をふまえて、厳密に教材分析を行い、現代的な実践的課題の解決に資する「学習指導案」の作成にとりくむことができる。[※意欲・関心・技能」 ⑤道徳の授業づくりのための構想力と「実践力」の基礎を習得する。[※知識・技能]
試験(70%)、発表(模擬授業者や討議中の発言など10%)、「小テスト」を含む、講義の課題にとりくむ姿勢(20%)などを総合的に評価する。
受講学生へのメッセージの意味で、はじめに、以下のことを了解してもらいたい。大学の学びと学びあいの主体は、学生一人ひとりである。したがって、講義や演習(実験)に主体的、自覚的に参加することはもとより、事前、事後の「予習」や「復習」の次元を超えて、講義などで発見した問題(疑問点を含む)やテーマをさらに深く追究しようとする真摯な姿勢が求められる。学びあいを含めて、もともと学ぶとは、このような主体的な営みなのである。しかし、現代学生が少なくない学習上の課題や困難を抱えていることはつとに指摘されている。したがって、こうした現代学生をも考慮にいれて、次の「予習」と「復習」を求めたい。
【授業時間外に必要な学習の時間:60時間】
予習:講義の第1回目から、次回の講義に関する中心的な文献や史資料の一部を配布する。
テキストを含めて、新聞の特集記事や専門研究者の小論、その他の配布物に必ず事前に目を通した上で、講義に参加することを求める。
復習:講義に継続的に参加するためには、講義内容にかかわる専門用語や概念の理解が重要となる。
これらの意味や定義などの理解が貧しい場合、講義内容の理解が困難になろう。また、同様にしてこれらの用語や概念を使って、物事を説明することもできない。そのため、適宜、講義内容のポイントとなる既習の用語や概念に関する小テストを実施する。採点して、次の講義のはじめに、簡単に答え合わせをして、「答案」は返却する。これを活用して、すでに学習した講義内容の理解を深めてもらいたい。
学校の授業をはじめとする教育労働は、〈対話〉を核とするコミュニケーション労働ともいわれる。対話には、幅広い教養や知的好奇心が求められる。もちろん、こればかりではない。とくに語彙力や表現力を少しでも豊かにするための努力を惜しまないでもらいたい。教育実習生の「研究授業」を参観して痛感させられのは、発問や説明のなかで、必ずしも適切とは思えないような言葉や表現が唐突に使われることが珍しくないという現実である。授業の導入や展開に相応しい発問の表現や、説明に必要な平易な用語の習得を意識して学習にとりくんでもらいたい。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
---|---|---|---|
教科書 | ①『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科 道徳編』(2018年) | 文部科学省 | 教育出版 |
教科書 | 『道徳教育 改訂版』〈教師教育シリーズ〉11 | 井口淳三 | 学文社/2016年 |
参考書 | 道徳教育の批判と創造ー社会転換期を拓くー | 教育科学研究会「道徳と教育」部会(編) | 株式会社エイデル研究所 |
参考書 | どうする?これからの道徳 | 大和久勝・今関和子(編) | クリエイツかもがわ |
参考書 | 「特別な教科 道徳」ってなんだ? | 宮澤弘道・池田賢一(編) | 現代書館 |
参考書 | 「四訂 道徳教育を学ぶ人のために | 小寺正一ほか | 世界思想社 |